第9回 株主総会

有限会社小平食品は、冷凍食品の加工業者で、

2代目社長の小平良介の手腕により急成長、現在約200名の従業員を抱えている。

小平食品の顧問弁護士は、三鷹智というキャリア10年目の弁護士である。

三鷹は、良介の紹介により、府中銀行の営業マンである立川伸吾と知り合いになり、

本日は、府中銀行において、行員の布田令次、長沼昇三を相手に「内部統制システム」

について説明をしていたが、やがて話は、株主総会について移行していった。

株主総会招集地

長沼「今度の株主総会なんですが、社長が「株主慰労もかねて軽井沢でやる」と言っているのですが、そんなことって可能なんでしょうか?」


三鷹「軽井沢?なぜ、軽井沢でやるんでしょうか?」


長沼「軽井沢に弊行の社員及び株主様向け保養所兼レクリエーション施設があるんです。ですが、株主様からのご利用の申し込みが少ないので、「株主優待としてこういう施設利用ができますよ」ということをアピールしたいそうなんです。」


三鷹「なるほど。まず、招集通知ですが、株主総会の場所が、過去の開催場所と著しく離れた場所であるときは、その場所を選んだ理由を記載しなければなりません。
以前は、株主総会は、定款で特別に定めてある場合を除いて、本店の所在地かそれに隣接する場所において招集しなければならないとされていましたが、会社法では、どこで開催してもいいのです。しかし、招集通知に理由の記載は必要です。」


布田「九州とか、北海道とか、外国とかでもいいんですか?」


三鷹「いいですよ。ただし、株主の出席が困難になるような開催地を選択すると、あとで株主総会決議を取り消されるおそれがありますから、あまり、非常識なのはどうかと思いますが。」


布田「軽井沢はどうでしょうか?三鷹 理由記載をすれば、ぎりぎり大丈夫だとは思いますが、そんな保養施設を実際にみてもらう程度の理由でしたら、東京でいいんじゃないですか。東京の銀行なんだし。」

書面投票制度

布田「なるほど、でも、今は、ほとんどの個人株主の方は書面投票で議決権を行使しますから、ある程度遠くても文句でないんじゃないですかねえ。」


三鷹「そうとも考えられますね。ちなみに、会社法では、株主が1000人以上いる会社は、書面投票制度を設ける義務があるとされています。」


布田「大会社でなくても義務なのですか?」


三鷹「そうです。やはり、株主が多ければ、それだけ、遠方に済んでいる株主も少なからずいるだろうと考えられますからね」

電子投票制度

長沼「電子投票制度の採用は義務ではないのですか?」


三鷹「これは義務ではありません。むしろ、以前は、電子投票を採用した会社であっても、書面投票用紙、つまり、議決権行使書面を交付しなければならないとされており、法律上は書面重視となっていました。
しかし、会社法では、招集通知を電磁的方法により受領することを了承した株主に対しては、書面投票用紙は送らなくてもよいことになりました。
長沼 便利と言えば便利ですが、なんかの事故でメールが実は送信できていなかったなんてときはどうすればいいんでしょうか。」


布田「それはまずいですよね。招集通知が送られていないということになり、後で大変問題になりますね。」


三鷹「しかし、株主総会の招集通知については、株主総会の2週間前までに発送しさえすれば、たとえ株主に到達しなくても会社は免責されますから、送信履歴に残っていることを保存しておけば、まずは大丈夫だと思いますよ。」

書面投票と電子投票の関係

布田「書面投票と電子投票を両方定めている会社で、株主が両方について議決権行使しちゃったらどうするんでしょうか?」


長沼「それは布田君、2票を認めるわけにはいかんのだから、1票とカウントするに決まっているではないか。」


布田「書面投票では「賛成」、電子投票では「反対」だったらどうするんですか?
長沼 そのときは、うーん…、プラスマイナスゼロで、結局無効となるのではないかな。」


布田「先生、本当ですか?」


三鷹「それは、会社が定めることですよ。重複行使であって、その内容が異なる場合の取扱いは、招集通知記載事項です。でも、電子投票の方を有効とする会社も少なくありませんよ。」

総会検査役

長沼「全員が書面投票で株主総会無事終了しましたなんてことにはならんですかねえ。
実は、6年前のことですが、総会屋とまではいかないのですが、ちょっと変な株主に狙われまして、株主総会の議事が大いにもめたことがあったんですよ。
それで、いくら取締役が説明してもらちがあかないから、強引に採決して終了したんですが、その後、「手続違反」ということで、株主総会取消決議訴訟まで起こされて大変でした。訴訟には結局勝ちましたけどね。」


三鷹「それは大変でしたね。検査役制度といって、株主総会の混乱が予想されるときに、株主総会の招集の手続及び決議の方法につき、後日「あの総会は無効だった」などと言われないように、公正さの証拠を残すための制度があるんですよ。
そして、この検査役選任については、従来は株主のみが請求することができましたが、会社法で、新たに会社側からも請求をすることができるようになりました。ですから、そういうときは、こういう制度も視野に入れた方がいいでしょうね。」

取締役の説明義務

長沼「あのときは、取締役の説明義務違反も問題にされたんですが、取締役の説明義務については会社法でどうなっているんでしょうか? 」


三鷹「以前は、「総会の目的に無関係」、「株主共同の利益を害する」、「調査を要する」ときは説明義務を負わないと明文で規定されていましたが、会社法では、さらに、「説明により会社その他の者の権利を侵害することとなる場合」、「実質的に同一の事項について繰り返し説明を求める場合」が明文化されています。
ただし、以前から「正当理由」がある場合には、説明を拒否できましたので、実質的には変わりません。「正当事由」が何かは大変難しいですが。」


長沼「その場で判断するのは、さらに難しいですなあ。」


                         (つづく)

 

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