第4回 機関設計

有限会社小平食品は、冷凍食品の加工業者で、

2代目社長の小平良介の手腕により急成長、現在約200名の従業員を抱えている。

良介は、小平食品の定例取締役会に出席しており、

来年度の業務等について他の取締役らと話し合っている。

取締役は良介を含めて全員で6人で、

専務取締役の町田勉、常務取締役の清瀬末吉は、良介の先代からの取締役である。

良介の長男である崇も平取締役として出席している。

去りゆく取締役~小平食品役員室において~

良介「えーっと、というわけで、いずれの議案についても、全員異議ないということでいいですね。これで、取締役会は終了とします。皆さんご苦労でした。」


町田「いよいよ、中国進出の話も本格化してきたねえ。」


良介「本当に、町田さんには、奔走してもらいました。」


町田「まさに、老骨にむち打って、という感じだったよ。」


清瀬「町田専務が老骨なら、歳が3つも上の私はどうなるんだい。白骨じゃないか。ハハハ。」


町田「いやいや。清瀬常務は未だにゴルフだって、スキーだってばりばりやって若いですよ。私は、年来の腰痛がここ最近特にひどくなってねえ。それでね、中国が軌道に乗ったら、私、引退しようかと思っているんだよ。」


良介「ええっ!冗談でしょ。そんな話は、やめて下さいよ。中国が軌道に乗ってもまだまだ、町田専務にはご意見番として頑張って頂かないと。」


町田「今日辞めるという話じゃないんだし、いずれ年寄りは辞めるんだから、良介社長も今後についても考えて下さい。」


崇「………(終始無言)。」

取締役会は不要?~法律事務所にて~

崇「いやあ、もう、親父は狸ですよ。正直言って、親父は、町田専務のことものすごく煙たがっていたんだから。」


三鷹「でも、いざ、向こうから辞めると言われるといろいろ思うところがあるんじゃないですか。」


崇「しかし、うちの年寄り役員がどんどん辞めていくと取締役会の雰囲気も大分変わりますよ。」


三鷹「しかし、良介はワンマン社長の典型だから、気を遣う取締役がいなくなると、取締役会自体を廃止しちゃうかもよ。」


崇「えっ!そんなことしていいんですか?横暴じゃないですか。」


三鷹「もともと、有限会社では、取締役会なんて設置しなくてもいいんです。」


崇「株式会社だと?」


三鷹「会社法では、一定の場合、取締役会を設けなくてもよいのです。」


崇「なんですか。その「一定の場合」というのは。」


三鷹「会社が株式の譲渡を制限している場合、つまり、譲渡制限会社である場合です。譲渡制限会社には、中小企業が多いですから、何も無理して、取締役会や監査役といった機関をおかなくても十分監督できるだろうという考えから、会社法では、譲渡制限会社の機関としては、最低限取締役1人と株主総会を備えればいいということになっているのです。」

大会社の機関設計

崇「ということは、上場会社みたいに株式を誰もが購入することができる会社は、やはり取締役会とか監査役は必要なんですね。」


三鷹「そうです。そういう譲渡制限をしていない会社を法律上「公開会社」というのです。一般には、上場した会社を「公開会社」というのですが、法律上は、上場していようがいまいが、譲渡制限を付していない会社を全部「公開会社」というのです。」


崇「とにかく、F会社やS会社が株主総会と取締役1人でいいというわけではないんですね。」


三鷹「F会社ぐらいの規模になると、会社法にいう「大会社」ということになるから、公開会社として取締役会が必要となるだけでなく、「監査役会」と「会計監査人」が必要なんだ。」


崇「「大会社」ってどの程度の規模をさすのですか。」


三鷹「これは会社法で決まっていて、資本金が5億以上か負債が200億以上の会社をいいます。世間に名が知られている会社は、ほとんど大会社ですね。
 それから、たしか、S会社は委員会設置会社に移行したんじゃなかったかなあ。」

委員会設置会社とは

崇「委員会設置会社?」


三鷹「そう。委員会が設置されている会社のこと。」


崇「そんな禅問答みたいな答えじゃ分からないですよ。」


三鷹「説明するんですか?なんか面倒だなあ…。そう言えばどこか行く途中で立ち寄っただけじゃなかったんですか。」


崇「まあ、もうちょっと時間ありますから。私も取締役として、一通りの知識は教養として身につけておきたいんですよ。」


三鷹「なんか、時間つぶしに付き合わされているような気がしないでもないけど…。
 委員会設置会社というのは、取締役会が基本事項の意思決定と各取締役の監督を行い、各取締役が実際の業務執行を行うという従来の組織でなく、取締役会は基本事項の意思決定と委員会及び執行役メンバーの選任に専念し、具体的監督は委員会が行い、業務執行は執行役が行うという仕組みの会社を言います。」


崇「複雑な組織だな。なんのためにそんな組織にするんですか。」


三鷹「コーポレートガバナンスの強化のためです。取締役会が取締役の監督をすると言っても、実際には、自分で自分の監督をするようなものですから、十分に監督機能が果たされないかもしれませんよね。そこで、業務執行は執行役に担当させ、監督は取締役会と委員会に担当させて、役割を分化するんです。」


崇「とすると、その委員会設置会社には監査役は不要では?」


三鷹「その通り。委員会設置会社で最低限必要なのは、株主総会、取締役会、三委員会、会計監査人の4つの機関です。」


崇「今「三委員会」って言いましたけど、その「三」というのは?」


三鷹「指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会のことです。ちなみに、指名というのは、「取締役」の指名です。」


崇「つまり、取締役会が委員会の委員を選んで、委員会が取締役の委員を選ぶんですよね。これで、コーポレートガバナンスは本当に大丈夫なんですか。」


三鷹「本当に大丈夫かどうかはよく分かりませんが…。」


崇「それに、取締役は執行役になることはできるんですか。」


三鷹「取締役の資格では業務執行をできないけど、取締役が執行役を兼任することはできますね。」


崇「とすると、取締役会のメンバーが業務執行にあたることもあり得るわけで、従来とそんなに変わらないんじゃないですか。」


三鷹「しかし、一応、委員会という組織が入っているわけですし、委員会のメンバーの過半数は社外取締役ということになっていますから、多少は効果はあるのかなと。
ただ、従来の制度とどっちがいいかはたしかに難しいですね。」

大会社で譲渡制限会社の場合

崇「やった。先生をやりこめたぞ。
最後に質問なんですが、大会社だけど譲渡制限会社だという場合、会社の機関はどうなるのですか。」


三鷹「大会社かつ譲渡制限会社の場合、株主総会、取締役、監査役、会計監査人が最低限必要です。」


崇「監査役と会計監査人が必要というわけですか。なんか難しいな。おっと、こんな時間だ。先生、私もう行かないと。」


三鷹「どこへ行くんですか?」


崇「今は秘密です。でも、また寄らせてもらいます。それでは!」


三鷹「なんだったんだ!?」


                         (つづく)

 

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