第15回 代表訴訟

小平良介は、持ち前の経営手腕により、冷凍食品の加工業者として

「有限会社小平食品」を急成長させ、先頃、「有限会社小平食品」から

「株式会社小平食品」に組織変更を果たした。
本日は、良介は、小平食品の顧問弁護士である三鷹智の事務所に

夕方訪れる予定であるが、その前に三鷹の事務所に至急相談したいという依頼者、

高円寺美樹が来所している。

別れた旦那と怪しい会社と名目監査役~法律事務所相談室において~

三鷹「高円寺さん、まだあの旦那に関わり合っていたんですか?」


高円寺「まあ、別れたとは言っても一応、夫だった人ですから…。」


三鷹「もともと、そういう金銭トラブルが離婚の原因だったんじゃないんですか!」


高円寺「…。いつも、面倒なご相談ばかりで申し訳ありません。」


三鷹「いや、泣かなくてもいいんですよ。こうなってしまった以上はこれからの事を考えないと…。

話を整理しますと、前の旦那に頼み込まれて、美樹さん、実質的には貴方のお父さんである、謙三さんが前の旦那が作った会社に出資したということですね。」


高円寺「はい。私名義で500万円、父名義で500万円出資しました。旦那の方は、200万円出資しました。出資と言っても現物出資ですけど。
ですから、設立当初は1200万円の資本金でスタートしたんですけど、その後、旦那の友人が3人それぞれ現物出資を200万円ずつしました。」


三鷹「つまり、旦那とその友人は全部、現物出資なの?」


高円寺「ハイ。」


三鷹「何を出資したって言うの?」


高円寺「ソフトウェアとかあとは…。私もIT関係ってよく分からないもので、何か難しいこと言われても頭に入らなかったんです。」


三鷹「なんだか怪しいなあ。それで、さらに全従業員10人に20万円ずつ出資をしてもらったという訳なんだね。」


高円寺「現在は資本金2000万円か。議決権割合としては、高円寺親子が50%、従業員が10%、旦那とそのお友達が40%か。」


三鷹「それから、取締役は旦那のほかには、誰がなっているの?」


高円寺「旦那の義理の弟と旦那の高校時代の先輩とかいう人がなっています。」

株主代表訴訟の前段階

三鷹「それで、あなたが名目監査役になっているという訳か。
しかし、名目だろうが、あなたに対して、従業員株主達から、あなたの元旦那、

つまり、社長に対して会社として訴えを起こせという書面が

送られてきている以上は、対処しないといけないですよ。」


高円寺「私は、これから、どうなるんでしょうか?」


三鷹「別にあなたが訴えられているというわけではないんだ。

つまり、あなたが、旦那に対して、訴訟を起こすかどうかを決断するわけですよ。」


高円寺「私が旦那を訴えるの?」

株主代表訴訟とは?

三鷹「いや、そうじゃなくてね。会社が旦那を訴えるんですけど。
こりゃ、株主代表訴訟の説明からした方がいいな。例えば、取締役が何かへまをして会社に損害を与えてしまうことってありますよね。」


高円寺「はい。ありますね。」


三鷹「その場合、会社がそのへまをした取締役に損害賠償の訴えを起こして、会社に弁償してもらうことが出来るはずですよね。」


高円寺「それは出来ると思います。」


三鷹「でも、会社といっても、結局、訴えを起こすかどうかは取締役会で決めますから、いわば身内に対しては訴えを起こしづらいので、会社としては訴えを起こさないかもしれませんよね。」


高円寺「おそらくは…。」


三鷹「その場合、株主としては、身内だからと訴えを起こさないのは許せないですよね。」


高円寺「ハイ。許せません。」


三鷹「ですから、会社が取締役を訴えようとしない場合には、株主が直接取締役を訴えることができるのです。これが株主代表訴訟というものです。」

株主代表訴訟における会社代表者

高円寺「でも、なんで私に社長を訴えろということを請求してきたのでしょうか?」


三鷹「それは、監査役設置会社、つまり、監査役がいる会社においては、会社が取締役を訴える場合には、監査役が会社を代表するということになっているからです。」


高円寺「私が会社を代表して社長を訴えるのですか?」


三鷹「そうです。もちろん、本当に元旦那が何も悪いことしていないという場合には訴える必要はありませんよ。」


高円寺「でも、従業員の方達全員がこうやって、取締役達が裏金をつくって会社の帳簿を操作しているとか、現物出資はインチキだいうのですから、全く根拠がないとも言えないんじゃないでしょうか?」


三鷹「それは何とも言えないね。どちらにせよ、会社の会計士さんにも聞いてみた方がいいんじゃないですか。」


高円寺「そうですね。毎年、忘年会の時にはいらっしゃるのでそのときにでも聞いてみます。」

不提訴理由通知

三鷹「そんな悠長なこと言ってられないですよ。すでに、株主から請求が来ている以上は、60日以内に訴えを起こすか、訴えを起こさない場合には不提訴理由を通知しなきゃいけないんですよ。」


高円寺「60日って、2ヶ月しかないじゃないですか!
それに、「不提訴理由を通知」って何ですか?」


三鷹「要は、どういう理由で、会社としては訴えることをしなかったのかを説明しなければならないのですよ。」


高円寺「そんな難しいこと…。先生にお願いできますか?」


三鷹「書面を作ることはできますが、問題は、本当に、裏金作りや帳簿操作、それに不当な現物出資があったかどうかの調査が大変ですよね。」

株主代表訴訟を提起できない場合

高円寺「仮に、もし、従業員の方々の言っていることが嘘だと思える場合には、会社としては訴えを提起することはできませんが、それでも、従業員株主の方々は代表訴訟を起こせるのでしょうか?」


三鷹「そういう場合には、結局の所、会社を脅してお金をとろうとか、会社に恨みがあって嫌がらせしてやろうという場合が多いのでしょうが、会社法では、「株主が自己若しくは他人の不正な利益を図り」、又は、「会社に損害を加える目的を有する場合」には代表訴訟を提起できないとされているんです。ただ、例えば、「金をよこせ」とか「会社をつぶしてやる」とか正面切って言う株主って、まずいないでしょうから、それを立証するのは難しいでしょうねえ。」


高円寺「主人は、ひょっとすると、何かやっているかも知れません。
ただ、私は、名目上の監査役に過ぎませんから、そんな立証がどうとか複雑なことに巻き込まれるのは困りますので、会社としては訴えは起こさずに、それが不満な株主の方にやってもらったらいいかなあなんて思うんですけど」

株主代表訴訟の対象

三鷹「そうは行きませんよ。そんないい加減な理由で、不提訴なんてことになったら、監査役の任務を果たしていないということで、あなたが代表訴訟を起こされる可能性だってあるんですよ。」


高円寺「ええっ!監査役も代表訴訟の対象になるんですか?しかも、私は、名目監査役ですよ!」


三鷹「監査役は代表訴訟の対象です。それに、名目だからと言って、監査役の責任を負わないということにはなりませんよ。」


高円寺「そんな………。」


三鷹「全く、会社の状況を把握してなかったんですか。」


高円寺「何も知りません。ただ、主人の方から、どこかの会社に吸収してもらうかも知れないということは聞いたことがありますけど。」

株主代表訴訟の原告適格

三鷹「それって、吸収合併?」


高円寺「たしか、そうだったような。」


三鷹「それでは、今の会社が消滅してしまうかも知れないということなんですね。」


高円寺「そうすると、代表訴訟はどうなるんですか?」


三鷹「例えば、代表訴訟が起こされてから、今の会社が吸収合併されても、株主はその吸収した側の会社の株主になるというのが通常ですから、代表訴訟は継続します。だけど、吸収合併された後は、代表訴訟を起こせません。」


三鷹「まあ、そんなわけで、代表訴訟については、説明したように、すぐに、監査役として調査を開始する必要があるんですが、本件の場合には、別のアプローチがあるんじゃないかと思うんですよね。」


高円寺「といいますと?」


                         (つづく)

 

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