第1回 LLP・LLC

~三鷹弁護士の事務所の相談室で~

三鷹弁護士は、有限会社小平食品の社長である小平良介と中学以来の幼なじみであり、

同有限会社の顧問弁護士を務めているが、今日は、良介の長男で、

同有限会社の取締役でもある崇が事務所を訪れて、

何やらしきりに三鷹に相談をしている。

崇は、良介のお仕着せの社長路線に常日頃から不満を抱いており、

ことあるごとに自分で新しい事業をやろうと考えているが、

おぼっちゃま育ちで思慮が浅い。
三鷹は、若手弁護士を2名を擁する個人事務所の所長である。

仕事においては、冷静沈着な判断をするが、義理人情に厚く、時折、

必要以上に依頼者の事情に介入するところがある。

 

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三鷹「…ですから、何度も言いますがお父さんに相談なさい。私としてもこういう相談は困るんです。私はあくまでも、小平食品の顧問弁護士なんですから。」


崇「ちゃんと相談料は払いますよ。今日は、一相談者として、先生にお話ししているだけなんです。それでさっき先生が言っていたLL…何とかの話の続きなんですけど。」


三鷹「LLP、有限責任事業組合の話ですね。」


崇「そうそう、そのLLPですけど。なんでそれを先生は勧めるんですか?」


三鷹「勧めてなんかいないですよ!ですが、お話しによると、崇さんのお友達、前田さんでしたっけ?その人が、携帯電話を使ったビジネスモデルを考えて、しかも特許も既に出願済みだということなんですよね。それで、その人と組んで新しい商売をやりたいと…。」


崇「もう一人、広告会社に勤務していた関根って奴がいて、今フリーの広告営業しているんですが、そいつには販促を担当してもらおうと考えているんです。」


三鷹「資金はほとんどが崇さんが提供するんですって?」


崇「やつらは、ほとんど金はもってないんですよ。事業立ち上げに1000万ぐらいはかかる予定なんです。私が800万出して、あと100万ずつを前田と関根が出すんです。」


三鷹「なるほど。LLPが儲けたり、損を出したりしたときの割合はどうするんですか?」


崇「そりゃあ、私が8、あとの二人が1ずつですよ。」


三鷹「でも、分配は必ずしも出資比率によらなければならないということはありませんよ。ですから、崇さんがたとえ8割出資しても、分配は3分の1ずつと定めてもいいのです。」


崇「何で私が8割出しているのに儲けは3割なんですか?」


三鷹「他の2人のやる気が全然違ってきますよ。人間ですから、損しても得してもしょせん1割だと思うと仕事にもそんなに責任を感じないんじゃないですか?」


崇「うーん。まあ、考えてみます。それで実際の業務執行はどうなるんですか?今のところ、私は何もする仕事がないみたいなんですけど。」


三鷹「たとえ、本音としては、スポンサー的にLLPに関わったのでしょうが、業務執行の意思決定には、崇さんも参加しないとダメですよ。あくまで組合ですから。」


崇「面倒だなあ。でも、勝手なことをやられても困りますから、ちゃんと参加することにしますよ。それで、具体的には立ち上げはどういう流れになるのですか?」


三鷹「今回の場合ですと、崇さんと、関根さん、前田さんが組合契約書を作って、出資を行って、LLPの登記をすれば立ち上がります。」


崇「登記費用はどれくらいかかるんですか?」


三鷹「登録免許税が6万円程度ですから、株式会社の24万円と比べると4分の1程度で済みますね。そんな登記費用よりも、重要なのは、組合契約書です。組合契約書には絶対的記載事項と任意的に記載することができる相対的記載事項があります。絶対的記載事項とは、LLPの事業、名称、組合員の氏名、存続期間、組合員の出資の目的及びその価額等です。」


崇「存続期間って?一度作ったらずっと存続するんじゃないんですか?」


三鷹「LLPは、会社と異なり、あくまである事業の為のプロジェクト共同体というイメージですので、必ずしも永久存続が前提ではないんです。」


崇「何だか随分会社のイメージと違うなあ。それで、相対的記載事項とは?」


三鷹「業務執行の決定につき総組合員の同意を要しない旨の定め等です。ですが、これらは、あくまで人数が多めのLLPを想定した記載事項ですから、3人だけなら全員一致で、業務執行の決定も合議でいいんじゃないんですかね。」


崇「つまんない話ですが、LLPの場合は、名刺には何て書くんでしょうか?」


三鷹「名刺ですか?それは、有限責任事業組合○○って書くんじゃないでしょうかね。」


崇「なんか「組合」だと頼りないイメージがあるんですよね。」


三鷹「たしかに、法人取引でないと受け付けないという企業もあるでしょうね。常に現金取引であれば構わないのでしょうが、例えば組合に納品する業者から見れば、得体の知れない売り掛けが残って嫌でしょうからね。それに、銀行口座も組合名義で開けませんし、仮に不動産なんかを取得しても、組合名義で登記なんてこともできません。」


崇「ちょっと待って下さいよ。先生は、何で私にそんなLLPなんかを紹介するんですか?私は、株式会社なんていうのはいろいろ面倒だから、何かいい手はないでしょうかと聞きましたが、銀行口座も作れないんじゃ困るんです。」


三鷹「組合員名義でなら作れますよ。でも、組合ですから、法人と同じというわけにはいきませんよ。法人格が必要なら、LLCっていうのもあるけれど…。」


崇「なんですか?そのLLCって。」


三鷹「新会社法で新しく創設された合同会社という会社組織ですよ。」


崇「LLCにLLPか。なんだか似てて紛らわしいなあ。」


三鷹「実際に似てるんですよ。両方とも、出資者と業務執行者の分離はありませんし、、どういう機関を設けるか等は自由に構成員で話し合って決められるんですよ。そうだなあ、違いというと、LLCの場合には業務執行に関与しない社員も認められるということかなあ。」


崇「LLPに法人格を持たせて、業務執行不参加社員を認めたのが、LLCなんですね。」


三鷹「そうです。LLCはあくまで法人です。だから、勧めることはできないのです。」


崇「はあ!?」


三鷹「LLPの場合は、法人ではないので利益がでても、法人課税がされることはありません。組合員の所得として課税がなされるだけです。これをパススルー課税といいます。」


崇「LLCの場合だとどうなるんですか?」


三鷹「LLCについても新会社法ができる前には構成員課税なんて話もありましたが、結局は法人であるということで株式会社と同様に法人税の対象となりました。ということは、配当を受けた場合にはその配当に対しても課税されるので、二重課税となります。もっと重要なのは、内部留保の問題です。LLCがパススルー課税であったならば、儲かったとしても、それをさらに事業に投資するためにLLC内部にとっておけば税金がかけられずに済んだのですが、国税庁が頑として、LLCにパススルーを認めなかったんです。」


崇「LLPに損失が出た場合には?」


三鷹「法人の場合ですと、損失が発生した場合でも、その損失は構成員の損失だと言うことはできませんが、LLPの場合には、各組合員に損失額が分配されるので、各組合員の給与所得等と相殺して、税を軽減することができます。」


崇「つまり、事業が赤字でも、少なくとも僕の所得税の軽減には役立つのですね。」


三鷹「まあ、LLCだろうが、LLPだろうが、あなたは小平食品の取締役なんですから、何かやろうという場合には、お父さんに言わざるを得ませんよ。」


崇「その辺は、先生の方から折りを見て親父に上手く言っておいて下さいよ。」


三鷹「まったく…」

~とあるカウンターバーで~

良介が三鷹をいきつけのカウンターバーに呼び出して、

2人は良介のボトルウイスキーをロックで飲みながら、崇の話をしている。


良介は、小平食品の2代目である。

彼が社長を継いだときは、会社は、従業員5名の小さな鶏肉加工会社であったが、

業務を冷凍食品、総菜向けの総合精肉加工に展開させ、

現在は、従業員を約200名も雇っている。

典型的なワンマンタイプで気に入らないことがあるとすぐに怒鳴るが、

あとで不合理に怒鳴ってすまなかったと謝るという可愛げもある。

 

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良介「そっか。いやあ、迷惑かけたなあ。ともかく今日はおごるから。まったく、アイツはいつまでフラフラしている気なんだ。LLPっていうのが有限責任っていうのは分かったけど、組合員は他にどんな責任を負うんだ?」


三鷹「そうだな。悪意又は重過失で、業務執行に際して第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うことはあるな。だから、預かり金を使い込んじゃったり、取り込み詐欺的な商売やったりすればまずいけど、まさか彼もそんなことはしないだろう。」


竜田「すいません。遅くなりまして。」


良介「おう!来た来た。」
~バーに、府中銀行の営業担当で、一ヶ月前から小平食品の担当になった行員立川伸吾が息を切らして駆け込んできた。

     
                         (つづく)

 

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